光の風 《風神篇》後編-3
ドォオン!
東の塔から爆煙が上がった。今の爆発音はそこからのものだったらしい。二人の視線もそこに釘づけだった。
カルサの表情が歪む。
「今回の襲撃、あいつらの動きを見ていると…目的はオレ達だ。」
カルサは視線をリュナに戻し、不安そうにしている彼女を見た。
「本当の名前、本当の事、あいつらが何を探しているのか分からないが、きっとオレ達に関係している。」
リュナは不安を出しそうになる口をかたく閉じて、黙ってカルサの次の言葉を待った。
「ここを乗り切るには目的をはっきりさせ、先手を打つ。それしかない。」
リュナは頷いた。
「オレはリュナが鍵を持っていると思ってここに来た。」
「レプリカの所に行きましょ。私の知らないこと、きっと知ってるはず。」
カルサが頷く、それに応えるようにリュナも頷いた。事は一刻を争う、リュナが走りだしたのを合図にカルサもそれに続いた。
「あ、でもカルサ!千羅さんは…?」
急に足を止め、リュナは振り返った。
カルサは首を横に振り、彼女の横に行く。
「千羅が戻ってこないということは…そういう事だ。」
リュナの瞳が大きく開いた。カルサはリュナの横を通り過ぎていく。その姿をすがるような目でリュナは追う。
カルサは振り返り、それに応えた。
「リュナ、レプリカはどこにいる?」
「…民の部屋に…自分の怪我を応急処置するように言ったわ。」
少し放心している様子が見られた。静かに、でも確実に彼女の心は乱れている。
「分かった。じゃあ、民の部屋に着いたらリュナはそのまま残れ。」
カルサの言葉に少し遅れて反応した。
「ここは戦場だ。人が傷つき、傷つける場所だ。迷いや心の隙は死に直結する。」
リュナは何も言えない。
「中途半端な気持ちで戦場に来るな。仲間を殺すぞ。」
カルサの表情は今まで向けられた事のない厳しさだった。彼の威圧に押し負けそうな自分がいる。
これが戦い。
これがカルサの生き抜いてきた世界。