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赤い靴
【青春 恋愛小説】

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『今』という希望-2

ピンポーン

インターフォンを鳴らすとナオが眠そうな顔で出て来た。

「あー、お前かー。…まぁ入れよ」

短くした髪の毛を掻きながらナオは再び家の中へ入って行った。
私も後に続く。



ナオの家は広い。
昔はナオの両親と、ナオがここに3人で暮らしていた。

玄関からナオを呼べばナオのお母さんが「いらっしゃい」と笑顔で迎えてくれ、今日のような休日はナオのお父さんがドライブに連れて行ってくれた。



けれど、そんなナオの両親はもういない。



今から4年前の11月、車に乗っていたナオの両親は対向車線から来たダンプカーと衝突した。
相手の運転手は酔っていたそうだ。

当時のことはよく覚えている。

まだ大学生だったナオは、通夜も葬式も泣かずに座っていた。

けれど、本当は悲しかっただろう。辛かっただろう。
式に来ていた誰よりも泣きたかっただろう。

そんな彼の気持ちは13歳だった私の心に痛いほど伝わった。





「ちょっと着替えてくるから待ってろ」

「別にあたしはそのまんまで気にしないけど」

「じゃあお前がいいなら」

ナオは白いヨレヨレのTシャツに黒のジャージのズボンのまま私を自分の部屋に連れてきた。



「さて、始めるか。準備はいいな」

「うん」

「優しくなんてできないからな。覚悟しとけよ」





「だから、違うって。これはさっき教えたばっかだろ」

「あっ、この問題ってさっきと同じ方法で解けるんだ」

「……」

私はナオに教えられながら数学と闘っている。



いつもは私の家で勉強会を行っているが、ナオが1日休みの日はこうして彼の家に行っている。

流石に私も3年生なので焦りはある。しかし、こうやって勉強をみてもらっているにも関わらず、私の成績は変わらない。



「おし、じゃあ少し休憩。あんま連続してやっても効果は出ないからな」

時計を見てみると、初めた時間から2時間以上経っていた。自分の集中力の高さに驚く。

「何か冷たいもんでも持って来るわ。ゆっくりくつろいでな」

そう言ってナオは部屋から出て行った。


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