やっぱすっきゃねん!UF-6
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翌日曜日。
「行って来ま〜す!」
朝 8時。 たくさんの荷物を持って自転車で自宅を後にする。
佳代にとって日曜日は、教科書やノートを入れたカバンを持つ必要も無く、制服を着る事も無いので練習に集中出来るから、他の曜日に比べて気分的に楽だ。
「…うう…寒いぃ…」
ジャージの上からウィンドブレーカーを着てるとはいえ、季節 1番の寒さが身体に凍みる。
「…くっそぉ〜…」
佳代は自転車をこぐ力を強めてスピードを上げた。 早く身体を温めたいのだろう。
野球やサッカーみたいに、屋外で行うスポーツにとって最も嫌な季節が訪れた。
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朝 9時。 強い北風が吹く中、いつものように練習が開始された。
部員達が長距離トレーニングをやってる最中、一哉と葛城は初対面同士で挨拶を始めた。
「葛城美幸です。 よろしくお願いします」
挨拶の後、深々と頭を下げる葛城に対し、一哉も帽子を取って挨拶を返す。
「こちらこそよろしくお願いします。 監督が感心してましたよ。 さすが大学で野球をやられていただけあって、指導が理論的で的確だって」
笑顔を向ける一哉。 葛城は俯き顔を赤らめる。
「お喋りですね、永井さんは。 昨日は初めてだったので、つい張り切っちゃって……」
「永井さんは、とても喜んでますよ。 もちろん私もですが、フルタイムで関わってもらえるコーチを切望してたんです」
葛城は言葉を交わしながら一哉を注意深く観察した。 永井の話からもっと怖いイメージを持っていたが全く違う。 むしろ温厚に思えた。
「ちょっと失礼します」
葛城との挨拶を終えた一哉はグランドへと駆けて行った。 見ると部員達に混じって後の方を走ってる。
(…?… )
葛城は分からず一哉を見ていた。 すると、部員達に向けてしきりに声を掛けている。