投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 156 やっぱすっきゃねん! 158 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!UF-2

───


 長距離トレーニングとストレッチを終え、部員達はグランドに広がりキャッチボールを始めた。

 葛城はジッと見ていたが、ガマン出来なくなったのか永井に言った。

「ちょっと見てきます」

 永井は不思議な者でも見る目で葛城を見た。

「見るって何をです?」

「彼等のキャッチボールのやり方です。 キャッチングやスローイングを見たいんです」

 そう言うとグランドへと駆け出した。

「初日から、あんなに慌てなくてもいいのに……」

 葛城の後姿を見つめる永井は、帽子を脱いで髪を撫でつけると再び被り直した。

 葛城は部員達の後をゆっくりと歩き、ひとり々のの捕り方や投げ方を凝視する。

 ある場所で足が止まった。

「違う違う!」

 さっそく捕まったのは 1年生部員だ。

「腕だけじゃなく、身体全体を使って投げるの。 足を大きく踏み出して、グローブを相手に真っ直ぐ向けて、踏み出した方のヒザを充分に曲げて腰を落としてから腕を振って」

 葛城は身振り手振りを混じえて部員に伝えると、 1年生に何度か投げさせた。
 最初は慣れてないのかスッぽ抜けていたが、徐々にボールの軌道は安定し、相手が構えるグローブの位置から大きく外れなくなった。

 葛城は、その光景に満足したようで、

「今の感じを忘れないようにね」

 そう言って微笑みを向ける。

「ありがとうございます!」

  1年生部員は帽子を取って頭を下げる。 その顔は、自分の悪い所が修正出来た事に喜んでいるようだ。

 葛城は次々と部員達を指導していった。 その修正箇所は的確で、方法も的を得たモノだった。

「へぇ…さすが元日〇大野球部だ。 やるなぁ…」

 葛城の指導の一部を垣間見た永井は感心していた。

 再び葛城の足が止まる。 前にいるのはキャッチャーの山下だ。 元々キャッチャー出身の彼女にすれば、特に目がいくポジションだ。

 彼女はしばらくキャッチボール姿を眺めた後、山下に近づいた。

「何故、キャッチボールの時は普通のスローイングで投げるの?」

「エッ?」

 山下の手が止まり葛城を見る。

「試合ではキャッチャーのスローイングを使うでしょ。 なのにキャッチボールじゃ普通の投げ方をしてるじゃない?」

 山下は何も言わずに黙っている。

(何なんだ?この人は…キャッチボール見るなり質問責めにして… )

 葛城はさらに 1歩山下に近づいた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 156 やっぱすっきゃねん! 158 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前