やっぱすっきゃねん!UF-2
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長距離トレーニングとストレッチを終え、部員達はグランドに広がりキャッチボールを始めた。
葛城はジッと見ていたが、ガマン出来なくなったのか永井に言った。
「ちょっと見てきます」
永井は不思議な者でも見る目で葛城を見た。
「見るって何をです?」
「彼等のキャッチボールのやり方です。 キャッチングやスローイングを見たいんです」
そう言うとグランドへと駆け出した。
「初日から、あんなに慌てなくてもいいのに……」
葛城の後姿を見つめる永井は、帽子を脱いで髪を撫でつけると再び被り直した。
葛城は部員達の後をゆっくりと歩き、ひとり々のの捕り方や投げ方を凝視する。
ある場所で足が止まった。
「違う違う!」
さっそく捕まったのは 1年生部員だ。
「腕だけじゃなく、身体全体を使って投げるの。 足を大きく踏み出して、グローブを相手に真っ直ぐ向けて、踏み出した方のヒザを充分に曲げて腰を落としてから腕を振って」
葛城は身振り手振りを混じえて部員に伝えると、 1年生に何度か投げさせた。
最初は慣れてないのかスッぽ抜けていたが、徐々にボールの軌道は安定し、相手が構えるグローブの位置から大きく外れなくなった。
葛城は、その光景に満足したようで、
「今の感じを忘れないようにね」
そう言って微笑みを向ける。
「ありがとうございます!」
1年生部員は帽子を取って頭を下げる。 その顔は、自分の悪い所が修正出来た事に喜んでいるようだ。
葛城は次々と部員達を指導していった。 その修正箇所は的確で、方法も的を得たモノだった。
「へぇ…さすが元日〇大野球部だ。 やるなぁ…」
葛城の指導の一部を垣間見た永井は感心していた。
再び葛城の足が止まる。 前にいるのはキャッチャーの山下だ。 元々キャッチャー出身の彼女にすれば、特に目がいくポジションだ。
彼女はしばらくキャッチボール姿を眺めた後、山下に近づいた。
「何故、キャッチボールの時は普通のスローイングで投げるの?」
「エッ?」
山下の手が止まり葛城を見る。
「試合ではキャッチャーのスローイングを使うでしょ。 なのにキャッチボールじゃ普通の投げ方をしてるじゃない?」
山下は何も言わずに黙っている。
(何なんだ?この人は…キャッチボール見るなり質問責めにして… )
葛城はさらに 1歩山下に近づいた。