やっぱすっきゃねん!UF-12
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夜。 水銀灯に照らされたグランドに集められた部員達。 練習後のミーティング。
永井が部員達に言って聞かせる。
「練習中に見た者もいると思うが、明日、朝から入部希望者のテストを行う」
部員達からざわめきが起こる。
直也の手が上がった。
「監督。 何組の 1年生ですか?」
「希望者は 2年生で転校生だ。 オマエ達も知ってると思うが、明林中でピッチャーをやってたそうだ」
ざわめきがどよめきに変わった。
「アイツ…そんなに凄かったのか…」
「オマエ、知ってるのか?」
佳代の独り言に橋本淳が反応する。
「…うん。 入部したいって言うから案内したんだけど…」
再び永井の説明が続く。
「とにかく、どの程度の力量を持ってるのか確かめる。 だから遠慮は一切無用だ。 特に朝練は直也に達也、淳。 オマエ達に頼んどくからな」
3人は大きく頷いた。
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「そういう訳なんですよ」
夜。 永井は帰宅すると一哉に連絡を入れた。 稲森の件でどう扱って良いのか正直迷っていたからだ。
野球部としてはピッチャーは喉から手が出るほど欲しい。 だが、あの性格では周りと衝突しかねない。
その旨を一哉に伝えると、彼は笑って答えた。
「永井さんの思った通りで良いと思いますよ。 私自身、褒められた選手じゃありませんでしたが、やはり高校までの部活は〈教育の一環〉としてやるべきでしょうから」
「やはり、そう思いますか?」
「どうです。 最終日の日曜は誰かに打たせては?ソイツのピッチャーとしての素質も試せるし、ポテンシャルも量れるから1石2鳥ですよ」
一哉はあまり気にも留めた様子も無く、軽い口調で永井に伝えるのだった。