やっぱすっきゃねん!UF-10
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「ね…姉ちゃん、待って…」
「修、あんまり遅いと置いてくよ」
夕方。 佳代は修と一緒に自宅近くにある遊歩道を訪れ、明日からに備えて走っていた。
1周 3キロの遊歩道。 そこをかなり速いペースで走る佳代。 対して修は付いて行くので精一杯のようだ。
ゴールが見えて来る。
「ダッシュするよ!」
振り向いて叫んだ佳代は、短距離走のようにスピードを上げた。 が、修はすでにバテ気味で、ダッシュする余力が無い。
距離はどんどん広がっていく。
「ゴール!」
スタートラインを駆け抜けた佳代は、あまり息を切らせず後を見た。 すると10秒ほど遅れてゴールした修は、バッタリと倒れ込み、荒い呼吸を繰り返している。
「だらしないわねぇ」
佳代はそう言ってそばの自販機へ走って行くと、スポーツドリンクを買って戻って来た。
「ホラッ、これ飲んで」
修はようやく身体を起こすとスポーツドリンクを受け取り、キャップを取るのももどかしいと一気に飲み干した。
「…はぁ…はぁ…あんなペース…はぁ…初めて走った…」
ようやく整いだした息で、修はあまりに速い長距離トレーニングに驚いていた。
そんな修を佳代は鼻で笑った。
「はっ!この程度で。 ウチじゃ今のペースで倍以上の距離を毎日走ってるのよ。
アンタも毎日走ってた方が良いわよ。 来年野球部に入ってから困らないように。 1年生でも 5キロは走らされるからね」
そう言って修を脅かすのだった。
───
翌月曜夕方。
ユニフォーム姿の佳代が保健室から現れた。 彼女は荷物を持ってグランドに向かっていた。
すると、
「ねぇ、アンタ野球部の人間だろ?」
後から声を掛けられる。 振り返ると青葉中でない制服を着た男の子が立っていた。
佳代は何だろうと聞いてみる。
「そうだけど…何?」
「野球部に入りたくてよ。 監督に会わせてくんない?」
「アナタ、入部希望者?」
「ああ、前の学校でもやっててさ。 まぁ、この学校よりもレベルは高強かったけどね…」
その横柄な態度と言葉遣いに佳代はムッとしていたが、入部希望者とあれば心象良くせねばとグッと堪えた。