15cm(後編)-1
――私、七瀬の事、好きかもしれない…。
「じゃあ早速、分かんないとこ聞きたいんだけど…」
七瀬と話すようになったのは、席替えで隣になってから。
それまでは名前さえはっきり覚えてない、クラスメイトの一人だったはずなのに、今は七瀬の事ばっかり考えてる。
「…渡辺?
渡辺もココ分かんない?」
「え?…あぁ、ココね。
これはこの公式を使って―…」
…あんまり、考えても仕方ない、か。
何も今すぐ答えを出さなきゃいけない訳じゃないしね。
それに、答えが出たからって、すぐに行動に移れるほど、私は積極的なタイプでも無いし。
「さ、七瀬。集中して頑張ろ!」
そうと決まれば、ぼんやりしてる場合じゃない。
来週の実力テストに向けて、気合いを入れて、勉強に取り組むことにしよう!
――ピンポンパーン…
『本日は7時をもちまして、閉館いたします』
勉強に集中してたら、あっという間に7時になっていた。
お昼を食べた後は、一度も休憩さえとってない。
「うわー!もう7時!?早っ。」
背筋をグッと伸ばしながら七瀬が言う。
「ね、ホント早い。
久々にこんな集中して勉強やったし。」
図書館の人が、まだ残ってる人達に閉館を呼びかけ始めたので、2人で慌てて机の上のノートや筆記用具を片した。
図書館の外に出ると、さすがに少し肌寒い。
「今日はホントありがと!
めちゃくちゃ助かった!
この恩は必ず!」
「いーよ、恩なんて返す余裕あるなら、次の実力テストで今日の成果出してよね。」
「当たり前だし!」
図書館の電気が消えて、並木道の続く何もない通りは急に薄暗くなる。
「…七瀬、明日は朝から部活なんでしょ?
遅くなるしそろそろ帰ろ。」
ちょっと名残惜しいけど、1日七瀬といられただけで、充分楽しかった!
―やっぱり、私は七瀬のことが好きなんだ―
…ほんとは、もう少し話していたいけど、気持ちがバレないように強がる。