15cm(後編)-6
3限目――
黒板の内容をノートに書き写すばかりの授業が続いて、眠気が襲って伸びをする。
ホントは目が良いと、カミングアウトした七瀬は、もちろん黒板の内容を聞いてこない。
それに、いつもは無駄に声をかけてくるのに、今日は全然話してないや…。
寂しい…。
…やっぱり私、七瀬が好きなんだなぁ。
ノートの端にところどころ書かれた七瀬の落書きを見ながら、切なくなる。
ため息混じりに、パラパラとノートをめくっていくと、真新しいページに見覚えのない文字を見つけた。
そこには――
『付き合ってくれませんか?』
と彼からのメッセージ。
隣を見ると、偶然なのか七瀬と目があってしまった。
そして、七瀬は私の見ていたページに目線を送る。
私の答えは決まってる。
…だけど今は授業中。
それでも、今すぐ伝えたいんだ。
私は音を立てないように、そっと机を動かした。
一番後ろの席、私は誰にも気付かれないように、空いていた七瀬の左手を右手でキュッと握った。
驚いた七瀬と再び目が合う。
だけど七瀬はすぐに目をそらして、そして――
私の手をぎゅっと握り返した。
―彼との距離。
―15cm。