15cm(後編)-2
「なに、渡辺、門限とかあんの?」
「ないけど?」
うちは、お姉ちゃんが2人いるせいか、わりとその辺は自由。
自己判断に任せてくれる。
「じゃあさ、もう少しつきあってくれない?」
「え…うん、いいけど。」
七瀬の突然の誘いに動揺してるくせに、やっぱり私は強がってしまう。
そんな私の葛藤にはお構いなしで、七瀬は「こっち」と言いながら、スタスタ歩いていく。
「…七瀬?どこまで歩くわけ?」
図書館前から歩き始めて、約15分。
駅とは反対方向で、道はどんどん暗くなる。
「あと少し。」
と七瀬は言うけど、これを聞くのは3回目。
さっきまで、肌寒かったのに、早足で歩いてるせいか体が熱い。
「ねぇ!七瀬!!」
スタスタと先を歩いていた七瀬がやっと止まった。
「ねぇ、一体どこに行くの?
こんな所に何かあるの?」
疲れて少し息を切らしながらも、聞いてみる。
だけど、
「ほんと、あと少し!」
と、七瀬は笑いながら答えるだけだった。
最後の“あと少し”から 5分。
やっと目的地に着いたらしく、七瀬が止まって、こっちを振り返る。
「ここ?」
周りを見渡すけど、普通の住宅街。
ここに何があるって言うんだろ。
「ねぇ、ここが何な…」
「やべっ!
ちょっと渡辺早くこっち!」
その瞬間、私達は自然に手をつないでた。
引っ張られるがままに、七瀬の横に立つ。
「ほら!」
指さす方を追ってみると…
「花火!」
どうやら、私達が歩いてきた道は少し上り坂になっていたみたいで、駅や駅の周りのネオンが、下の方でキラキラしてる。
その少し奥で、小さな音を立てながら、次々花火が開いていく。
「すごくない?
ここ、俺の穴場スポット。」
そう言いながら、七瀬は得意気。