陽だまりの詩 11-1
あたしは兄貴が大好きだ。
気付けば自然に好きになっていた。
もしかしたら、生まれた時から好きなのかもしれない。
兄貴はいつも飄々としているのに、常にあたしのことを一番に考えてくれていた。
そんなことをぼんやり考えていた頃だった。
お父さんが死んだのは。
母親は荒れた。
兄貴は一人で家のことをするようになった。
あたしは家のことがよくわからないまま、幼稚園に入園した。
普段は親戚のおばさんが来てくれたけど、兄貴もよく幼稚園には迎えに来てくれていたし、家では毎日寝るまで遊んでくれた。
小学校の入学式には学生服で来てくれた。
その頃になると、もう兄貴は高校生で体も大きくなり、それこそ父親のような安心感を抱かせてくれた。
しかし、あたしの憎むべき母親が、徐々に二人の生活を壊していった。
兄貴はバイトを始めて、毎日のように家を空けていた。
夜にクタクタで帰宅して、すぐに家事をする。
美沙、いつも晩ご飯遅くなってごめんな。
美沙、今日は何が食べたい?
こんな時でも、兄貴はいつもあたしのことを一番に考えてくれた。
でもやっぱり相当きついらしく、日に日に疲弊していくのが子どものあたしでも見てとれた。
でも、あたしもそれなりに精神的苦痛を受けていたのだ。