水泳のお時間〜2時間目-7
「ひ、平泳ぎ…?」
「うん。まだ最初だし、手の動作はつけないでいいからとりあえず足の動きからやってみて」
瀬戸くんはそう言うと、わたしに平泳ぎの動作をやってみせるよう目で合図してきた。
だけど当のわたしはとっさに泳ぎ始めるのをためらってしまう。
なぜって、平泳ぎはわたしの一番、苦手としているものだから…
「あれ?もしかして平泳ぎの仕方知らない?」
「そ、そういうわけじゃ…でも…」
しばらくそのまま泳ぎ始めることが出来ずにいると、瀬戸くんが顔を傾けてきた。
動揺したわたしはとっさに言いかけた言葉をつまらせる。
けれど思い切ってその意図を伝えようと顔をあげようとしたその時、直前で瀬戸くんに手首をつかまれた。
「そっか。いいよ。じゃあこっち来て」
驚いて顔をあげた時には、瀬戸くんはわたしの手を引き、プールの隅へとつれていった。
一体何を始めるのか戸惑っていると、わたしはそのまま瀬戸くんにプールの端の部分を手で掴まされる。
「せ、瀬戸くん…?」
「ちゃんとつかまっててね」
不安げな表情を隠せずにいるわたしに向かって、瀬戸くんはただ静かに微笑んだ。
その瞬間、わたしの心臓がドクンと音をたてる。
…?
なに?
わたしはこれから何をされてしまうの…?
「あ、あの瀬戸くん…これは…」
「本当にどうしようもないな桐谷は。平泳ぎの泳ぎ方も分からないなんて」
「?…きゃっ!?」
瀬戸くんはまるで囁くようにそう言うと、何を思ったのかいきなりわたしの両足首をつかみ、そしてそれを一気に水面近くまで持ち上げてきた。
突然足が水中に浮いて自由を奪われてしまったわたしは思わず大きな悲鳴をあげると、慌ててプールの角にしがみつく。
するとそんなわたしを見て、後ろにいた瀬戸くんが呆れたように口を開いた。
「ほらな。だからちゃんとつかまっててねって言ったのに」
「っ…?瀬戸く…」
「でも大丈夫。心配しなくても、忘れんぼの桐谷にはゆっくり丁寧に教えてやるから」
静かに微笑みながら、そっと耳元に甘く囁いた瀬戸くんの言葉に、思わずわたしの背筋がゾクリとふるえた。
「やっ、お願い待って……!」
とっさに何かを感じたわたしは思わず叫び声をあげる。
けれど瀬戸くんはその言葉をさえぎるように、無言で私のかかとをお尻の上まで押しあげたかと思うと、まるで半円を描くように足裏を動かす動作を繰り返した。
そのたびに水着のスカートが彼の前でゆらゆらと揺れ動いて…。
その瞬間、わたしは思わず自分の顔がカァッと熱くなるのを感じた。
えっ…
ちょ、ちょっと待って…
いくら何でもこの格好は…恥ずかしい…
恥ずかしすぎるよ…っ!