気付かずの恋-5
「覚えてるよ」
「馬鹿なのに?」
「命の恩人に」
猫の様に、透き通るグリーンの瞳で夕焼けの空を見上げるアルに、少し寂しさを感じた。
私たちは似ている、と思う。
唯、彼の心の奥、人に知られぬ部分にはとてつもない深い闇がぽっかりと口を開けている気がした。
「アル」
「ん」
「覚えてる?」
「貴方からだったんだよ」
「何回も聞いた」
「忘れてるじゃない」
そう、きっと忘れている。
「『そんな良い場所ひとり占めかよ』」
「え……」
「だろ」
「流石秀才」
得意げな顔に、クスリと笑む。
「まぁ、覚えてるよ。うん」
「……ありがと」
「―なんか言ったか?」
「ううん」
有り難う、
私あれから夕方に荷物を纏めなくなった。
唯一の友人と、話す機会が減るのが悔しいからね。