萌えるなら私に-2
「あー、本当に可愛いよな、すずは。隼人が羨ましいよ」
剛太は自分の枕を抱き締めてベッドに倒れ込んだ。
私は剛太を一瞥してため息をつく。
なかなか心を開かなかった私のために、剛太は『ツンない』を見始めた。しかし、逆に彼は『ツンない』の魅力にハマって、私と同じオタクとなってしまった。
それは別に問題ない。むしろ、共通の話題ができて嬉しい。
けれど、何だろう。
剛太がすずの話をするたび、私は胸の辺りが気持ち悪くなるのだ。まるで黒い雲が私を包んでいる、そんな気持ちになってしまう。
だから、私はある対策をたてることにした。
「剛太、私、今からオタクやめることにした」
「えっ!?」
ベッドで横になっていた剛太は飛び起きて私を見る。
「…本気?」
「うん」
私が脱オタすれば、きっと剛太も自然と『ツンない』から離れるはず。
元々は私との共通の話題を作ろうとして見始めたのだから、私がやめれば剛太もやめるだろう。
しかし、剛太の返事は意外なものだった。
「…ふーん。別にいいんじゃない?どーせ無理だと思うけど」
「なっ…!、そんなことないもん!!」
「だって真樹、ずっと好きだったじゃん。今さらやめられないよ」
真樹が脱オタしてる間の『ツンない』は録画しとくから、そう言って剛太は笑った。
絶対!
脱オタしてやるんだから!!