恋の奴隷【番外編】―心の音K-6
「何よ、もう映画も観たんだからいいでしょ?」
「僕はまだ終わりって言ってない」
お菓子売り場の前でだだをこねる子供のように、その場から動こうとしない葉月君と、言い争うこと数分。痺れを切らして、少し強めに言おうと口を開くと、
「いい加減にしな…」
“きゅるるるる〜”
私のお腹は情けない音を鳴らして、私は言いかけた言葉を引っ込めた。
「夏音、お腹すいたの」
「べ、別に!ぜーんぜんお腹なんてすいてない!」
お腹の音って自分じゃどうしようもないから困る。強がってみせても、空っぽの私の胃袋は素直だ。
“ぐうぅぅ〜〜〜”
「なに食べる」
くっくっ、と咽の奥で笑いながら葉月君は私の手―と言っても手首なんだけれど―を引いて歩き出した。
「うぅっ…」
私はがっくりと肩を落としてうなだれながら、葉月君の後に続いたのだった。