目には目を 歯には歯を-1
目には目を
歯には歯を
やられたのなら
やり返せ
とられたものは───
───とり返せ
──今は世界史の授業中。
あたしは先生のその話に釘付けになっていた。
目には目を 歯には歯を
ことわざだとずっと思っていた。まさか法律だったなんて。
法律の中でのこの言葉の意味は、『他人の目をつぶした者はその目をつぶされる』だ。結構シビア。
キーンコーンカーンコーン
授業が終わってから望の席に行った。望は一生懸命に板書を写していた。
「のーぞみっ」
「あぁ、佳菜か。何か嬉しそうだけど、どした?」
望はこちらを向いて笑う。望が笑うからあたしも嬉しくなる。
「うん、さっきの先生の話が面白くって」
「『目には目を、歯には歯を』でしょ?確かにあれは面白かった。『やられたらやり返せ』なんて今じゃ考えられないよな」
望は目をキラキラさせて話す。そういうとこ、すごく可愛い。
あたしは望が大好き。望は気付いてないみたいだけど。
望の笑顔とか、優しいところとか、たまに拗ねるところとか、大好きなところは言い足りない。