フリースタイル3〜後半〜-4
フロアに出ると2人掛け用のソファーに1人で座ってる恭介と目が合った。
「お疲れぇ」
今度は話し掛けてくれた。
「ありがとう」
あたしは笑顔で答えると、恭介の横に座った。
今なら素直に可愛く恭介と話せるかもしれない。
「これからヒカルと歌ってくの?」
恭介があたしの顔を覗き込んで言った。
「…今のところは」
聞かれて初めて気づいたけど、あたしヒカルくんと全然打ち合わせしてない。
だけど多分これからも続くんだろう。
なんとなくそんな気がした。
まだ知り合ってそんな経ってないけど、ヒカルくんの結構適当な性格をあたしは理解しつついた。
てか、あたしも適当な人間だし。
「じゃあヒカルに聞いてるかもしんないけどー、今度jam主催でイベントやるから遊びきて」
恭介はポケットから紙を出してあたしに渡した。
フライヤー…っていうんだっけ?
「ヒカルもライブするからさ」
そう言いながら恭介はあたしの肩に腕をまわす。
「行くよ」
恭介に会えるなら…って思ったけどやっぱり恥ずかしくって言えなかった。
そのかわりあたしは恭介に甘えるように寄りかかる。
もっと、くっついていたい…
「抜けない?」
恭介があたしの耳元で言った。
「実香ちゃんともっと一緒にいたい。2人でどこか行かない?」
耳に息がかかる。
行く!
そう言おうとしたけど、後ろで恭介を呼ぶ声がした。
「恭介ぇ!」
声の主はスネークさん。
振り向くと意外にもすぐ後ろにいた。
「忘れてるかもしんないけど、もうすぐ出番だからね」
「やべ、忘れてた」
恭介はそう言うとパッとあたしを離して立ち上がった。
「あと10分もねぇからさっさと打ち合わせするよ」
スネークさんがそう言うと恭介は何も言わず、関係者onlyと書かれた部屋へと入って行った。
あたしにも何にも言っていかないから少しショックをうけていたら、代わりにスネークさんが「ごめんね」と言ってから恭介を追いかけて行った。