15cm(前編)-1
――1ヵ月前までは知らなかった笑顔が、今はこんなに側で私を惹きつけてる。
『15cm』
高校に入学して半年。
やっと高校生活にも慣れてきた頃。
夏休みが終わって、久々に会うクラスメイト達。
正直、まだ全員の名前はすんなり出てこないけど、顔は覚えてるから問題ないよね。
きっとみんなも同じようなもんだろう。
新学期初日は特にブランクがあるせいか、1学期でせっかく仲良くなった友達ともよそよそしい。
きっと一週間も経てば、また普通になるんだろうけど。
「さぁ、全員そろってるか?HRを始めるぞ。
さて、まずは今日から新学期なので気分を変えるために席替えを行う。」
「えー」とか「やったー!」などの感想が口々に漏れる。
私はどっちでも良いやと、ぼんやり外を見ていた。
「では、席替えはくじで決めるから、出席番号順にくじを引くように。」
教室はがやがやしてる。
もう、くじを引いた人達の不満そうな声や、喜びの声。
でも、私はやっぱりそんなのはどうでも良かった。
「遙(よう)!
うちら最後の方だね、出席番号順とか平等じゃないよね!」
突然話しかけてきたこの子は、薫(かおる)。
1学期、となりの席で仲良くなった。
明るく活発、だけど後先考えずに突っ走るところがたまにキズ。
「まあねー、確かに薫は和田だし、私は渡辺だもんね、でもクジだからあんまり関係ないと思うよ。」
「そっかーそうだよね!
残り物には福があるしね!」
そんなこんなで、話をしていたら、あっという間にクジを引く番が回ってきた。
クジには『7』と書いてある。
黒板に番号で割り振られた席順が書いてあるので、それに従う。
7番、7番…
あ、あった。
どうやら窓際みたいだ。
それだけで顔がゆるむ。
私は窓際の席が好きなのだ。
窓際をゲットできたし、あとはなにも望むまい。
「…渡辺が隣か。」
席を移動すると隣の席になったらしい彼が呟いた。
しかし、名前が思い出せない私。
「あ、えーと…」
気まずい感じで苦笑い。
「俺、七瀬。」
「あ、七瀬くんね、ごめんごめん。」
私の気まずい雰囲気を察して、自己紹介をしてくれたみたいだ。
悪いことしたなぁ、クラスメイトの名前、ちゃんと覚えよう。