15cm(前編)-4
キーンコーンカーン…
「じゃあなー!
あ、渡辺!明日の約束忘れないように!
10時に北区図書館で!」
言いながら七瀬は部活にすっとんで行った。
それを聞いていたクラスメイト達は、何の話なのか聞きたくて仕方なさそうにしているけど、勿論わざわざ説明するつもりなんてない…が、
「遙!一緒に帰るよ!!」
ほっといてはくれない方が約一名。
…薫だった。
「ねぇ?」
いつもの公園で寄り道。
さっきの出来事について、詳しく聞きたくて仕方のない薫は、公園に着くやいなや、話を切りだした。
「…七瀬のことでしょ?」
もう分かってるよ、聞かれなくても、と自ら七瀬の名前を口に出してみる。
「そう!七瀬!…二人はいつの間にか付き合ってるわけ?」
「な!なんでそうなるかなぁ!?」
「だって、明日デートなんでしょ?
さっきはずかし気もなく七瀬叫んでたよね。」
確かに、事情を知らない人にはデートだと勘違いされても仕方ないか。
「あれは、明日、勉強教えて欲しいって頼まれただけだし。」
薫に説明しながら、なぜか虚しい気持ちになってくる。
「でもさー、何で遙なのかな、やっぱり七瀬は遙が好きなんじゃ…」
「ありえないって!隣の席だからでしょ、頼みやすかったんじゃないの?」
薫の言葉に被せるように声を荒げる。
そんな私の様子に、薫もそれ以上、七瀬の事は口にしなかった。
「あ、来た来た!渡辺!」
10時に北区図書館。
ぴったりに到着すると、すでに七瀬が私を待っていた。
学校での制服姿しか見たこと無いせいか、何だか違和感。
たぶん、それは七瀬も同じで2人してぎこちない空気。
…そうか、今日は七瀬と2人きりなんだ…。
改めて考えると、妙に手が汗ばんだ。
ただ一緒に勉強するだけなんだから、と自分に言い聞かせてはみるものの、変な緊張で体がこわばっていくのが分かる。
私、何でこんなに緊張してるんだろう。
…私、七瀬のことが好きなのかな?