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『本当の自分……』
【少年/少女 恋愛小説】

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『終わりの闇、始まりの光』-2

(翌日……功刀由佳)

私(由佳)は今、大学生として一人暮しをしている。結局、父親との溝は埋めるコトが出来ず、卒業と同時に私は家を出てしまった。
「由佳ぁ……お昼どうする?」
「そうね、パスタなんかどう?」
「賛成!さっ、行こ行こ!!」
あの日以来、私は男言葉を使わなくなった。もう、男に戻るコトは出来ないし、女として生きるしかないのだから……

……《生きる》……


あれほど自分自身を忌み嫌い、死にたいとまで思っていた私が、今は日々を穏やかに過ごしている。

それは、この隣で微笑む弥生の存在があったから……。何度も、くじけそうになった。全てを捨てて、逃げ出したいとさえ思った。その度に励まし、時には叱ってでも支えてくれる彼女のお陰で、私は私でいるコトが出来た。

そして、これからもそうであって欲しかった。平穏なままで……

「ねぇ、由佳。圭子姉が、また遊びにおいでって言ってたよ。」
「うん、今度ね。最近バイトが忙しくって……」
今、私はバイトをしている。我儘を言って、一人暮しさせて貰っていた私は、せめて生活費ぐらいは自分で稼ごうと決めた。お陰でバイトと大学とアパートを往復するだけの生活に忙殺されている。
「あ、電話……」
不意に携帯が鳴った。着信を見ると、それは母親からだった。
「もしもし……うん、とりあえず元気よ。それよりどうしたの?………えぇ!!それホント?……うん…うん……わかった。知らせてくれてありがとう。後でこっちから連絡するから……うん、じゃあね。」
母からの電話……それは昨日、自宅に魅也から連絡があったというコトだった。どうして電話番号を知ったのかは分からないけど、祖母の訃報を報せて来たらしい。

そして、電話の最後にこう言った。私に会いたいって……

「どうしたの由佳?なんかあったの?」
余程、私の顔色は青ざめていたのだろう、心配そうに覗き込みながら弥生は言う。
「魅也から電話があったみたいなの、私に会いたいって……」
「なにそれ!?どういうコト?」
驚く弥生に私は母からの電話の内容を話した。魅也の祖母が亡くなった事、そして出来れば葬儀に来て欲しいと言った事……
今にして思えば、私の決断は正しかったのかもしれない。

あの日、東京から帰った私は母と話した。魅也の事、圭子さんの事、弥生の事……。そして、これからの私の事を……
「母さん、これからは由佳って呼んで……。もう決めたの、私[ヨシキ]は私[由佳]として生きるって……」
私の言葉に母は突然泣き出した。私に向かって何度も何度も『ごめんなさい』と言いながら泣いていた……

数日後、弥生を家に連れて来たときも、彼女の手を取り『ありがとう』を繰り返しながら泣いていた……

そんな母を見て私は思う。どうして気付けなかったんだろうかと。辛いのは私だけじゃなかった……。母もまた苦しんでいたんだということに……

それから、少しづつ母と会話するようになった。母は私の良き理解者であるのと同時に、味方だった。卒業を控え、進学を希望した時も、一人暮らしをしたいと言い出した私に難色を示した父を最後まで食い下がって説得してくれたのも、母だった。だからこそ、今はこんな風に母と話せるのだ……

「で…どうするの?」

弥生の問い掛けが頭の中に響き、私を現実へと引き戻す。

『どうするの?』私はどうしたらいいんだろう……
「どうしたらいいと思う?」
「それは由佳が決めるコト……。そうでしょ?」
弥生はそう答えた。彼女はいつもそんな返事をする。私が出した結論を支持してくれる……だけど、必ず私に決めさせた。まるで、答えは自分で見つけなさいと言うように……
「私、行こうと思う。だけど一人だと不安なの、だから……」
「いいよ。一緒に行こ……ね?」
私の言葉を最後まで聞くこともなく、弥生は答えてくれた。私が素直に自分の気持ちを口にした時、弥生は必ず応えてくれる……

さりげなく、いつもの言葉で……

「ありがとう弥生。なんか、あの頃に比べると弱くなっちゃったね私……」
ここ最近、弥生に甘えてばかりだなって私は思う。捨て身でいた頃と違い、失いたくないものが出来てから、どんどん弱くなっていくように感じる。自分が、こんなにも弱かったなんて思っても見なかった。
「莫迦(ばか)ね。女はそれくらいでいた方が可愛いのよ?ふふふ」
そんな私の気持ちを見透かしたように、彼女はそう言って軽く私の背中を叩くと笑った。
「じゃあ、圭子姉に連絡しとくから……」
「え?」
「だって、向こうに行ったら泊まりになっちゃうし、それに由佳、礼服持ってないでしょ?」
弥生の一言に私は、あっと小さく声を上げた。


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