『終わりの闇、始まりの光』-11
同じだ……
あなたは私と同じなんだね弥生……
きっかけこそ違うけど、私達は孤独でいるコトを選んでしまった。選ばざるを得なかった。
初めて会ったときの印象は魅也に似ている……ただそれだけだった。
だけど、あなたの隣は何故か居心地がよかった。妙な親近感を感じていた。それはきっと、互いに自分を偽っているという似た者同士だったから……
私はその性別が故に……
あなたはその境遇が故に……
だけど……
いいえ、だからこそ……
あなたがいたから私でいられた……
私がいたからあなたでいられた……
そして不器用な私達は、きっと自分の想いを相手に伝えるのが下手なのかもしれない。
でも、あなたは覚悟を決めた。だから私に偽らない本当の想いを告げたんだよね?弥生……
私にはわかるよ。だってあなたは、もう一人の私なんだから……
私は怖れていた。魅也に正体がバレてしまうコトを……。だけど、本当の理由は傷つきたくなかったから。自分が可愛かったから。
弥生……私はまだあなたみたいに覚悟を決められないわ……
だけど……ねぇ弥生?あなたが帰って来たら、抱き締めてもいいかな?
『何があったの?』なんて聞かない。あなたが話してくれるまで……
でも、一言だけ言わせて『頑張ったね、ありがとう』って……
魅也は、女になってしまった私をどう思うだろう。やっぱり、気持ち悪いって言うのかな?
一つだけ言えるのは、もうバレるコトに怯える必要なんてないってコト……
もう会えなくても、それでも想い出の中のあなたは、いつも私に笑いかけてくれるから……
弥生……あなたが帰って来る前に、いつもの私に戻るね。だって、あなたの負担をほんの少しでも減らしたいから……私にはそれぐらいしか出来ないから……
「弥生は、大丈夫…だよ!だから…帰って…来たら、三人でご飯…食べよ?姉さん。」
私は初めて彼女を『姉さん』って呼んだ。そして、彼女の胸の中にもう一度飛び込む。
「ゆ、由佳…あなた…」
「私なら…平気……。もう大丈夫…だから。はぁ…お腹空いち…ゃった…なぁ……」
やっぱり、上手くいかないみたい……。どうしても声が震えてしまう。だけど、頑張るから……弥生の……姉さんの為に……
「そうね……食べに行きましょう。ありがとう、由佳……」
おそらく、すべてわかっているに違いない。それでもやっぱり彼女は何も聞かずに私の髪を撫でてくれるだけだった。
(再び……真壁魅也)
「おかしいでしょ?女同士で好きだとか愛してるだとか……。きっと、私は由佳の中のヨシキに惹かれていたのかもしれない……」
彼女はそう言って、真っ直ぐに私を見つめた。
「じ、じゃあ……」
私の声に彼女は頷く。
「あなたの想像通り、彼女はヨシキ……正確には、かつてヨシキだった人。」
「ヨシキに何があったの?」
「全部話すわ。だけど、彼女も苦しんでいたんだってコトだけはわかって欲しいの……」
弥生が何故、突然に気持ちを変えたのか、私にはわからなかった。だけど、彼女の言葉を聞き逃すまいと私は耳をそばだてる。私の前からいなくなった後、彼の身に何があったのかを弥生は話してくれた。
そしてそれは、私の想像を遥かに越えていた。
どんなに恐怖だっただろう、性別の変わっていく自分が……
どんなに辛かっただろう、自分を殺してしまうコトが……
どんなに勇気が必要だっただろう、女性として生きていくコトを決意するのが……