秋と春か夏か冬〜番外編00話『始まり』〜-7
「どうしたんだよ杏子」
もしかして心配のあまり泣いているのかな?杏子にも人間らしいところがあるんだなぁ…。
「やっと夏輝ちゃんを離したか……」
ギラッ!
突然杏子の目が光った…ような気がした。そして…
「人様の親にまで心配かけさせてんじゃねー!迷子を探しに行ってお前まで迷子になってどーする?ミイラ取りか貴様は!
だいたい、5日目は私が用事あるから早く帰るって散々言ったろうが!
あっ、しかも桔梗さんのネックレスはどうした!無くしたとか言ってみろ?殺すからなてめー!」
虐待が問題視されている今日、そんな言葉が甘く感じるほどの殺人コンボをくらう恭介。すでに意識はない。
夏輝のお母さんが止めに入る。
「杏子さん、落ち着いて。そんなに連続技くらわせたら喋れないわよ。それに意識…飛んでる」
「あっ…」
やっと動きを止める杏子。
「しかもネックレスはうちの夏輝ちゃんが持ってる……返しますね」
杏子は少し考え…
「…いえ、このバカには『肌身離さず持ってろ。なくしたら殺す』と散々言っておきましたので、それでも夏輝ちゃんがもっているのなら、たぶんあげたんでしょう…。こんなヤキいれといて今さらですが、恭介の意志を尊重します。持っていてください」
「でも大事な物なのでしょう?…じゃぁこっちの連絡先教えますので、なにかあったら連絡してください♪」
「わかりました。じゃあ私たちは急ぐのでこれで!5日間楽しかったですよ。帰って落ち着いたら連絡します。でわまた」
「ええ。気を付けて♪」
親たちが連絡先を交換し、メル友になっていたのを恭介と夏輝は知らない。
恭介が気絶から目を覚ましたのは帰りの車の中。
その後は夏輝との約束を果たすために頑張っていくのだが、理緒とのある事件がきっかけでキャンプの記憶は吹っ飛んでしまうのだった。
でも1つだけ…かすかに覚えていたこと…。
『バスケットで1番になる!』
誰かと交した約束…たわいもない会話の中だったけど、大切な大切な約束…そして夢…。
これだけを便りに…恭介は夢に向かって頑張っていくことになる。
――翌日(夏輝視点)
目が覚めて辺りを見回すとママがいた。
「…ママ?」
「あら、目を覚ましたのね♪夏輝ちゃんがいなくなって心配だったけど、恭介くんが夏輝ちゃんを捜しに真っ先に飛び出して行っちゃったのよ。そういえば暗いの苦手なのに……大丈夫だった?」
「うん!きょうすけがいてくれたからへいきだったよ♪…あれ…きょうすけは?」
僕は辺りを探す。