秋と春か夏か冬〜番外編00話『始まり』〜-6
「うん…おやすみ♪きょうすけくん…」
「あと、次からは『きょうすけくん』じゃなくて『きょうすけ』で良いよ」
「??どーして?」
「み、みらいの旦那さんに…くんづけは…ヘンだろ?」
「…うん♪そうだね♪ねっ、もっとくっついて良い?」
「少しだけなら…って抱きつくなー!」
「へへ、きょうすけはあったかい♪」
「まったく…」
「すぅ……きょうすけ…好き…」
「寝言?寝るのはやいよ……。なつき…俺も…す、好きだからな……って、きこえてないか…おやすみ、なつき…」
2人とも眠りについた。だが…。
ごそごそ…
「きょうすけ……ほんとうは起きてたんだ♪…ありがとう。ちゃんときこえたよ♪♪さいごにもう1度だけ…」
ちゅっ♪
「えへへ♪じゃぁほんとーにおやすみ♪ありがとう…旦那さま♪♪」
思えば…この頃からすでに演技する才能はあったかもしれない……。
――翌日(恭介視点)
「ん?いま何時だろう?時間……わかんないなぁ…」
俺は目を覚ますと、抱きつきながら眠る夏輝を起こさないように、そっと辺りを見渡した。
すると向こうの方で煙が出ているのが見えた。
「あれは杏子たちがいるところかも…。なつき!抱きついてないで起きないと!…あぁ、しょーがない」
夏輝が一向に起きる気配がないので、俺は夏輝をおんぶして煙が出ている場所へ向かった。
木々が生い茂る森の中を10分くらい走っただろうか…。見えてきた…杏子たちだ!
「おーい!」
俺は声をかけた。すると夏輝のお母さんが俺達に気付き、すぐに駆け寄ってくる。
「恭介くん!よかった…心配してたのよ。夏輝に続いて恭介くんまで戻ってこないんだから…。探しに行くにも暗いから朝方まで待たないとダメだったし…大丈夫だった?」
「うん。すぐになつきを見つけたんだけど、迷子になっちゃって…。それよりおばさん…なつきがぜんぜん起きないんだけど…」
俺は夏輝をおばさんに渡した。(おばさんと言ってもまだ20代だが)
「あらあら…ごめんなさいね♪夏輝ちゃんは一度寝ちゃうと中々起きないのよ」
そして俺は杏子の方へ振り返る。おばさんの横にいる杏子はワナワナと震えていた。