初めて過ごす夏-1
蝉がもはや地面の中にいるのを耐えられなくなって、もうその鳴き声を響かせる。
普段はうっとうしいだけのその鳴き声すら気にならず、居間のカレンダーに丸を付けた。
初めて君と過ごす夏が来る。二人で立てた予定はばっちり。
海に行こう。
祭りへ行こう。
皆と一緒に花火をしよう。
例えそれが出来なくたって、僕は充分幸せだよ。
君と一緒にいられたから。
くだらないだけの宿題も君と一緒に出来たなら、それだけで楽しいイベントに早変わりする……のかな。
後ろから冷やかす母親の声も気にならない。
急いで階段を駆け上がって窓を開ける。生暖かい風が、夏の到来が遠くないことを告げていた。
蝉達よ、まだ鳴くな。
夏はこれから来るんだぞ?
携帯が震える。画面を見ると君の名前。
手早く通話ボタンを押して耳に押し当てた。
さぁ、精一杯楽しもう。
「もしもし?」
きっと、忘れられない夏が来る。