冷たい情愛Die Sekunde-4-7
「紘子がさ、ぼ〜っと校庭を見てたんだ」
私は、時間がある時は校庭で走る智子を見ていたものだ。
「最初、誰かの彼女なのかなって」
私は親友である智子が大好きだった。彼女が走る姿は私の誇りでもあった。
「紘子がさ、すごく大人に見えたんだ…大人の女性に」
一目惚れだったんだろうな…そう彼は言った。
それより少し後、彼は理事長から先生に挨拶するようにと言われたらしい。
そして彼は、職員室にいない先生を探し校舎中を歩き回った。
たどり着いた、数学科の物置代わりの部屋。
鍵が開いており、彼はそっと中を覗いた。
誰もいない様子だったので、自分はその中を探索していた。
よく分からない難しそうな本や、大きな紙に書かれた数式のような掲示物など。
棚で仕切られた室内は、更に奥にも空間が広がる。
その奥でキョロキョロしている瞬間…廊下から足音が聞こえてきた。
新入生だった彼は、反射的に仕切り棚の後ろの荷物の間に隠れた。
そこに入ってきたのが高校生だった…私なのだ。
「先生とのこと…見たの?」
私は禁忌とも言える、教師と生徒の交わりを彼が見ていたのかと訊ねた。