冷たい情愛Die Sekunde-4-4
「家庭教師が、毎晩来るんだ」
「ええ?凄い」
「その1人がね…神崎先生だったんだ」
私は、突然の事に一瞬頭が真っ白になった。
運命というには大袈裟だが、偶然にしては驚くことばかりだ。
彼の下宿先が理事長宅であり…理事長が神崎に勉学指導を依頼したということだったのか。
「神崎先生も、理事長のツテであの学校の教師になったから」
「でも先生…そのことを私に言ったこと…なかったよ」
「そうだろうね…」
アルバムのページを進めていく。
そこには理事長先生と遠藤くん…そして神崎先生が写っていた。
立派なソファーに座る理事長先生の後ろで、少し離れて二人が立っている。
「高校に合格した記念の食事の後、撮った写真だ…」
彼は少しだけ懐かしそうに写真を見つめている。
私もその写真を見つめる。
私の知らない…先生の顔。
私と一緒に過ごす時とは全く違う厳格な教師の顔。
「紘子は…さ、先生のこと…もう大丈夫?」
「うん、大丈夫」
私は無理などしていない。こうして先生の写真を見ても涙は出てこない。
それが遠藤くんが傍にいてくれるからだと…彼自信は分かっているだろうか。