冷たい情愛Die Sekunde-4-19
「それでも、警察じゃないが…証拠が残るような事象ならいい。これだけ科学が発達してりゃ証明できるからな」
「そうじゃないものも、あるってことですか?」
「あるだろうな。一つだけある」
「それは、何ですか?」
「人の心だな」
片山は、あえて私の目を見ずに言っているようだった。
人の心…
過去の…人の心…
私はこの時、はっきりと分かった。
片山が言ったことが意味するところを。
私がそうだったではないか。
母校を訪れたあの日…
私は、知ることのなかった愛した人の 『過去の心』 を知った。
恩師は、愛した人の 『過去の心』 を私に伝えてくれた。
「今のお前が幸せそうなら、言うつもりは無かった」 そう恩師は言っていた。
何も知らないふりをすれば出来たかもしれない。
でも敢えて話してくれたのは…
それが、私の悲しみを解放する方法だと分かっていたからかもしれない。
遠藤くんだって同じなのだ。
先生とお義姉さん…
『先生が義姉を愛することなんて無かったのかもしれない。死ぬまで…』
彼はそう言った。
今となっては…二人の心は分かりようもない。