冷たい情愛Die Sekunde-4-18
「起きた事象の正体が分からないから、人間は恐れを覚えるんだよ」
片山は、酒を飲みながら話し続ける。
「そうなった理由が分からないから、人間は恐れる」
「はあ…」
「だから、人間は何でも知りたがるし、理由を見つけようとする」
片山は、中ジョッキを軽く空けてしまった。
片手を軽く挙げ、次の酒を注文し…彼は再び話しだす。
「時には人を巻き込み、無理やりこじつけてまでも…でも、それで納得できりゃ安心なんだよ」
「はい…」
片山が注文した中ジョッキは、すぐに届き…二杯目だというのに嬉しそうな顔で喉に流し込んでいる。
「厄介なのは、それが出来ない時だ」
「それって、どんな時なんですか?」
「過去に起きた事象だよ」
片山の言っていることが、段々と見えてきた。
「過去のことは、それが出来ないってことですか?」
「そうだ…だから怖いんだよ」
私も片山の真似をして、中ジョッキを空にした。
「過去には戻れない。過去の状況を再現することは出来ない。だから確認しようが無いだろ」
私は、一気にアルコールを飲んだのに…喉が渇いてくる。
汗が出る。手のひらは怖いくらいに熱い。