冷たい情愛Die Sekunde-4-10
娘の心が、その事実を知ったことで…壊れてしまいそうだと分かっていたからだった。
そして、娘を傷付けるのは許さないという…父としての圧力もあったのだろう。
しかし先生は勿論その事情を知ることはなく…
彼女が待つのを我慢できなくなり、父親に訴えたと思っていたのだろう。
義父も、それなりの男で…その事実を口にすることは絶対になかったと言う。
「義父も勝手なところはあるけど。娘を心配する普通の父親なだけだと思う」
「うん…すごく分かる。誰も悪くないよね」
私は心の底からそう思った。
「紘子…違うんだ…」
義父が私の存在を知らなければ、神崎先生への態度も圧力的なものにはならなかった。
そうすれば、先生も義姉をそれ以上…軽蔑せずに済んだかもしれない。
義姉も、愛する人からそんな目で見られずに済んだかもしれない。
義父も、自分からの密告という形ではなく…
先生が正々堂々と頭を下げれば…
もしかしたら、義姉との別れを受け入れたかもしれない。
先生と私も、幸せになれたかもしれない。
彼は…ずっとそう思って…自分を責めて…
「そう思って生きてきた…」
「ずっと…?」
「ああ…情けないけど」
どれだけの時間、彼は自分を責め続けてきたのだろう。