冷たい情愛Die Sekunde-3-8
「明日も、相手の人は仕事休みなんでしょう?」
「まあ…」
「だったら、帰り、寄ってもらいなさいよ」
「寄るっていっても、家の方向が全然違うの」
「だったら、泊まってもらえばいいじゃないの」
私は、すぐさまこの場を逃げ出したかった。
母は、私をすぐにでも結婚させたいらしい。
そのために、相手と会って流れを作ってしまいたい…という魂胆が丸見えだ。
「お客様用のお布団なら干しておくから」
「お酒はビールでいいかしらねえ」
私は、呆れたまま家を後にした。
都内を運転するのは久しぶりで、ハンドルを握る手は嫌な汗をかいている。
「ねえ…運転大丈夫?」
助手席に乗った遠藤くんは、本気で心配している。
「大丈夫っ!」
「運転代わろうか?」
「平気だよ!遠藤くんだって普段運転してないでしょ」
「紘子よりは上手いよ」
遠藤くんは、私がハンドルを握り締めカチカチになっている姿を失笑しはじめた。
「負けず嫌いだよね、紘子って」
図星なので、私は何も返す言葉がない。
信号が赤になり、停車をすると…彼はいたずらをしかけてくる。
運動できるようにTシャツを着てきた私のその中に、手を入れようとするのだ。