冷たい情愛Die Sekunde-3-6
彼女は、夫はこういう味のものが好きだとか…
私がこう料理すると、それだけは残さず食べてくれるとか…
普段は文句ばかり言うけど、本当は優しい人だとか…
楽しそうに話しながら、夫のために土産を選んでいた。
遠藤くんからは、何も連絡がない。相当緊急の連絡だったのだろう。
しかし、私にはそのほうが都合がよかった。
先生の名前を聞いても、今はもう大丈夫だ。
それは強がりではなく、本当の気持ちだ。
しかし…
遠藤くんは、母親が先生と面識があるなどとは一言も話してくれなかった。
人と人との繋がった糸が…複雑すぎて私には全く想像できないでいる。
先生のことを想い出すことは辛くない。
今の私は、遠藤くんが何かを隠しているのではないか…と思うほうが辛かった。
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私は、帰宅すると久しぶりに父と晩酌を始めた。
母は機嫌よさそうに、こちらに背を向け料理を作っている。
母から、私に恋人が出来たことを聞いてはいたらしい。
「結婚は、考えているのか?」
父は端的に尋ねてきた。
「そういう話はまだ…」
「そうか、まあ…そういうのはタイミングだからな」
それを聞いて、母はぶつぶつ言っている。