冷たい情愛Die Sekunde-3-4
「あの、中学生のころ、悪いことばかりしたと聞きました」
「そうなのよ、凄かったのよ」
彼女は苦笑いをした。
「姓が違う…のは少し気になりました」
私は恋人の母親に初対面で聞くのも失礼かとは思ったが、この人なら正直に感じたことを伝えても大丈夫だと思い訊ねてみた。
「私ね、再婚したのよ。あの子が中学生の時に」
本当は、彼も同時に再婚相手と養子縁組し姓を同じくしようと思ったが…
それに激しく反発し生活の乱れた息子を見て、落ち着くまでは辞めておくことにしたらしい。
それがダラダラ続き、結局今まで二人は違う姓の親子になってしまったのだ。
「あの子が社会人になってからは、もういいかなって夫とも話してたんだけど」
今回自分が上京したのは、これで最後だと決めて…養子縁組の話をしに来たからなのだと。
夫も、義理とは言え息子となった遠藤くんに、少しでも残すものがあればとの好意的な意図なのだと。
遠藤くんの気持ちも、少し分かる気がした。
お金はある方がいいが、そういう親子の経緯があると素直に貰うとは思えないのだろうか。
義理の父親とは、今では仲がいいのが救いらしいが。