冷たい情愛Die Sekunde-3-2
休日だというのに、彼の携帯がまた鳴った。
着信ではなくメールだったようだ。
手にしたのは、彼の仕事用の携帯。
私も彼と同じ世界で仕事をしているので、急な問い合わせがあることは知っている。
「紘子、ごめん。食べ終わったらすぐに帰ろう」
彼は詳しい事情を母親と私に説明することなく、そう言った。
「あ、でも…」
私は、彼の母親の方を見た。
母親は何か思いついたのか、明るい表情で言った。
「なら、紘子さん。一緒に買い物でもしましょうよ」
たまにしか上京できないので、これが楽しみなのだと言う。
私も断る理由もなく、彼の母親ともう少し話してみたかったのでそれを了承した。
遠藤くんは本気で呆れた顔をしている。
「母さん、余計なこと言うなよ」
と念を押して、食事もそこそこに退席した。
残された私たちは食後のコーヒーをゆっくり口に運ぶ。
彼女は何でもはっきり口にするタイプだが、それが決して意地の悪い感じではない。
「芳がお付き合いする人が、紘子さんで良かったわ」
「どうしてですか?」
「あの子ね、あんまり『女』が強い女性はダメだと思うの」
ということは、つまりは私は、あまり女性らしくないということか。