冷たい情愛Die Sekunde-3-15
広い芝生の広場では、家族連れがいたるところでお弁当をひろげている。
ゆっくりとした時間の流れ。少し汗ばむくらいの風。
「遠藤くんも、相当の自信家ってこと?」
私が言うのもなんだが、彼は仕事が出来る。
乱れた生活から抜け出した若きし頃も、相当努力したことだろう。
「俺は後者だよ」
彼は私の目を見て、そう言った。
「まさかあ」
私は冗談かと思い、笑って答えた。
しかし、彼は真面目な顔で続けた。
「先生や片山さんとは全く違うよ」
「私は、遠藤くんは凄いと思う」
彼ほど、愚痴を言わず淡々と仕事をこなし、それでも人に優しくできる余裕がある。
「紘子に『別れよう』って言われる夢をいつも見るんだ」
「紘子がいつか、いなくなったら…俺、どうなっちゃうだろうって」
私が悪いのかもしれない。
男から見て、女の「弱さ」は分かりやすいほうがいい。
背が低い…自分より力が弱い…つまりは「守ってあげたい」と。
私は、そう思われるような生き方をしてこなかった。
というよりは…
結局は、いつも自分のことしか考えてこなかったのかもしれない。