冷たい情愛Die Sekunde-3-14
「裸で寝てて、お尻掻いてたこともあるよ」
「ええええ?」
「それは嘘」
彼の言葉にいちいちまともに反応する私は、疲れてしまう。
なのに、また彼は1人で笑っている。
「でもさ、別にそんな姿を見せてもいいんじゃない?」
「え〜、女としては微妙だけど」
「紘子、セックスの時以外は中性だからな」
彼は、私をそう見ていたのか。
正直ショックだった。
私の落ち込んだ顔を見てまずいと思ったのか、彼は優しい口調で言った。
「このお弁当、別に男の気を引くために作ったわけじゃないだろ?」
「うん、遠藤くんと食べたかったから」
お腹のすいた彼が、喜んで食べてくれたら嬉しいなと思いながら作ったお弁当。
「片山さんもさ、多分だけど…俺と似たような感覚で、紘子のこと好きだったんじゃないかな」
「遠藤くんの言い方って、難しくて分かりにくいよ」
私は、難しい論文を読み上げられている気分だった。
「じゃあさ、神崎先生も同じだと言えば分かるかな」
上手く言えないが、それなら分かる気がした。
私が必死であればある程、離れる男も多かった。
「生意気だ」と陰口を叩く男もいた。
男は殆どがそうなのだと、卑屈になった時期もあった。
「紘子を好きになる男は、相当の自信家が、ダメな男だよ」
「ええ?それ、いいのかなあ…」
「そう?それだけ紘子が自分に対しての努力家だってことだよ」
彼は、次は何を口に入れようか迷っている様子で、お弁当箱をずっと覗き込んでいる。