フリースタイル3〜前半〜-5
「kyouz、その間実香をよろしくね」
満足げにそう言うとどこかに行ってしまった。
気まずい。
そう思っていたら恭介はポケットからドリンクチケットを出した。
「なんか飲む?」
………すごい緊張する。
「うん」
あたしは短くそう言ったけど、もしかしたら声が震えてたかもしれない。
「なんか久しぶりだね」
恭介はカウンターへ向かいながら言った。
「……そう?」
我ながら可愛くない返事。
あたし、今かなり緊張してる。
「元気だった?」
他愛もない会話。
でも今は話せただけですごい嬉しい。
「元気だよ」
あたしはできる限り笑顔で言った。
「そっか。俺、すげー実香ちゃんに会いたかったからさ、今こうやって話せてすげー嬉しい」
恭介は言いながらあたしの髪をなでる。
胸がキューンとした。
いや、まじで。
恥ずかしげもなくこういうセリフを言うあたり、きっと言い慣れてるんだろうけどあたしは素直に嬉しかった。
ここで、あたしも会いたかった!…なぁんて言えたら可愛いんだろうけど、そこまで素直になれない。
あたしは笑顔をかえすのに精一杯だった。