フリースタイル3〜前半〜-4
「てゆーか実香、歩くの早い!」
後ろで少しだけ息を切らしてる沙織を見て気づいた。
あたしはこの時もしかしたら焦っていたのかもしれない。
早く恭介と喋りたくて。
最初会った時のあの感覚を忘れたくなくて。
気づいたらclubに着いていた。
いつもは20分かかる道のりが、今日は13分。
思わぬ所で新記録達成。
clubでは既にたくさんの人が入っていた。
人ごみに埋もれそうな中、あたしは何故かものの3秒で恭介を見つけた。
あ、目があった。
あたしはわざと恭介の目の前を通った。
でもただ通過して終わった。
しかも目も逸らされた。
自分から話しかけてみようか?
待ってるだけじゃうまくいかない事は、あたしはこの性格上よくわかっている。
あたしがこれ以上ないってくらい心臓をドキドキさせていると、後ろから沙織があたしの腕を掴んだ。
「人すごいんだから勝手にいなくなったりしないでよ!」
沙織の声に恭介はこっちを見た。沙織もそれに気づいたようだ。
「あ!kyouz!!こんな近くにいたんだ!」
「よう。てかー、お前スネークとなんかあった?」
2人のやりとりにあたしは少しモヤモヤしていた。
沙織だったら恭介とあんな自然に喋れるんだ。
2人とも近くにいるのになんだか遠い。
「スネーク、なんか言ってた?」
「うん。沙織の事が気になってしょうがないってー」
「………それ聞き飽きたわ。あたしスネーク探してくる」
沙織はくるっとあたしの方を向くとにやりと笑った。
何か企んでる感じ。