another story.-3
彼女が去って、1週間。
今年も、桜が咲いた。
桜並木を歩く。
自販機で120円のジュースを買い、ベンチに座って、散る桜を見つめた。
その時、ふとやわらかい春風が吹いた。
彼女は散る桜を見つめていた。
もしかしたら、枝の間から青空を見つめていたのかもしれない。
彼女は切なげな顔をしていた。
もしかしたら、枝の間から差す日の光が眩しかったのかもしれない。
そして僕はそんな彼女を見つめていた。
もしかしたら、それは夢だったのかもしれない。
***
4月になって、僕は2年生になった。
朝、時計の針は遅刻しかねない時間をさしていた。
彼女が今何処にいるのか僕は知らない。
彼女が今どんな未来を創っているのか僕は知らない。
けれど、僕はここにいて、今を生きている。
『・・・いつかまた会えるよね?』
そう呟いても、学ランを着た鏡の中の彼は無表情のまま答えてくれない。
『・・・いつかまた会えるよな!』
そう呟いたら、学ランを着た鏡の中の彼が少し微笑んだ気がした。
そして、また1秒ずつ時計は未来へ進む。
・・・さて、これから僕らはどこまで行けるのだろう。