初恋のハジメ方 act.1-1
Act,1
――――春。出会いと別れの季節であり、また多くの恋が始まりを告げる季節。恋愛とは縁遠かった女の子は1人の男の子に出会いました。
それから2人の物語はゆっくりと、しかししっかりと回り始めたのです―――。
(苦しいよぉ〜 汗)
ここは都内を走る電車の中。現在は朝の通勤ラッシュの真っ只中。よって、車内は人でごった返している。そんな車内に女の子が1人。
(はぁ〜。 なんで寝坊なんかしちゃったんだろう 涙)
と、心の中で自分の愚かさを呪ってみるも、現状は変わらない。あと数駅はこの人地獄に付き合わなければならない。彼女は小柄な体で精一杯耐え続けた。
彼女の名前は夏木 柚子。都内の有名大学に通う19歳。そう、こう見えて19歳である。152cmと背が小さいためどうしても実年齢に見られないのは昔からの悩みである。
が、クリッとした大きな瞳で、整ったきれいな顔立ちをして非常に愛嬌がある。
だが、生まれてこの方恋というものに無縁で、彼氏もいない。
しかし、元々色恋沙汰に興味がなく、疎いので本人は特に焦りなどはない。
―――――――そうこうしているうちに数駅が過ぎて車内の人口密度はさらに上がっていた。
(しっ死んじゃうぅ〜 涙)
人ごみに押し潰されそうになっていたそのとき、彼女の背後に、というよりおしりに違和感が。最初は気に留めないようにしていた彼女だが、抵抗しないのに気をよくして段々とエスカレートする手にいい加減彼女も不快感を催した。
(どっどどどどうしよう!!! 汗)
しかし、このようなことに遭遇するのは初めての彼女。なので、怖くなってしまい、小さく身をよじることしか出来ない。
わずかながら抵抗をみせるも彼女を撫で回す手はそんなものを諸共せずに行為を続ける。そしてその手はとうとう彼女の身に着けた膝丈のスカートの中に入ろうとしていた。
(ちょっと!? ほんとにヤバイかも 汗)
といよいよ迫るわが身の危機に冷や汗が背中を伝ったそのとき――――
「おじさぁ〜ん。痴漢はダメだよ痴漢は〜。」
彼女はわが身を撫で回す不快な感触が急に消えたので、振り向くと、自分の背後にいるおじさんが、制服を着ている男の子に腕をひねり上げられているというなんとも非日常的な画が飛び込んできた。
そんな光景に彼女は呆気にとられてしまった。
「アンタも大人しくされるままじゃダメだろ!」
と突然に自分に向けられた叱責の言葉に現実に引き戻され彼女ははっとした。