愛の印〜六原恵美子〜-6
「でも、ホントに会えましたね」
「え?」シャンパンを口にしながら恵美子が振り向いた。
「恵美子さん、また絶対に会えるって。あの時言ってたから」
「あ・・・そうね^^」
恵美子もあの一週間の事を思い出したようだ。
「・・・で、あれから良いパートナーでも見つかったかしら?」
「いいえ全然。書くことでイッパイイッパイですよ」
「結構このパーティーって女性がたくさんいるわよ。出版関係者多いけど」
そう言われれば、意識して見ていなかったけどカチッとスーツを着こなした女性が多い。
「編集者なら作家の扱いに慣れてるからね〜」
「あ、六原さぁん!ちょっといいかしらぁ?」
どうやらお偉いさんに呼ばれたようだ。
「は〜い」
手をひらひらさせて恵美子は応えた。
「ゴメン、ちょっと行かなきゃ・・・」
「いえ、どうぞ。ありがとうございました」
「また何かあったら連絡ちょうだい。名刺に書いてあるから」
「連絡します」
(カラダの相談はプライベートでお聞きしますわよ)
恵美子はカズキの耳元で囁いた。
からかわれてるのか本気なのかわからないが、二年前と変わらない恵美子にカズキはホッとした。
アズマ先生は何をしているのだろうかと気になったので会場をウロウロ探し回った。
ひときわ大きな笑い声と、両手にコンパニオンのおねえさんを侍らせながらどこかの出版社の人間と喋っている。
(ここ、キャバクラじゃねえんだから)
「おっ!カズキこっちこっちぃ」アズマはカズキに出版社の人間を紹介した。
「今度ここの出版社で書き下ろしを出す予定があってな」
スーツ姿のオトコとオンナ。
「柊谷出版の木下雄平です。お願いします」
「石田ミチルです」
ミチルは恵美子と正反対の、少し茶色いロングヘアーで、目鼻立ちがハッキリ整った顔をしていた。
落ち着いたスーツ姿だが、その服の上からも大きな胸がわかるくらいだった。
カズキはミチルをじっと見つめている自分に思わずハッとした。
(ん?俺っておっぱい星人だったっけ・・・?)
『編集者なら作家の扱いに慣れてるからね〜』
恵美子の言葉が脳裏によみがえる。
(まさか・・・んなことある訳ないよな)
しかし、そんなことが起こってしまうのがカズキの運命らしい。
でもそれはまた別の機会に。