愛の印〜六原恵美子〜-5
「ん・・・」
恵美子がムクッと起きあがった。気を失っていたのだろう。キョロキョロと辺りを見回してカズキと目が合うと
恥ずかしそうにベッドに潜り込んでしまった。
カズキは恵美子を抱きしめた。
「恵美子さん、気持ちよかった・・・」
「・・・・うん・・・あたしも」
恵美子はベッドの中で自分の腿の間から流れていたカズキの白い体液を指で掬った。
人差し指にベットリと絡みつくカズキの体液。恵美子はペ○スを頬張るように自分の指を舐め回した。
「おなかのなか、手良嶋くんがいっぱい」
「中に放出してもよかったの?」
「うん。ちゃんとピル飲んでるし・・・最後ぐらいちゃんとあたしの中でイって欲しかった」
二人はまた、恵美子さん、手良嶋くんと呼び合っている事に気が付いて笑った。
恵美子はカズキと唇を重ねた。少し生臭いところがまたリアルな感じがした。
舌を絡め合ってお互いの唾液を交換し合う。何故か二人とも同時に涙が出てきた。
一週間はあまりにも短い。でも精一杯愛し合った一週間。
「ありがと、恵美子さん」カズキは恵美子を抱きしめて耳元で囁いた。
「今度会うときは・・・また小説家とカメラマンね」
窓の外は少し明るくなっていた。
「もう朝だねえ」二人でシーツを身体に巻き付けてベランダに出た。
「まだ寒いね」眼下に見える高速道路にはちらほらと車の流れが出来はじめていた。
「フランスも寒いのかな?」
「うん。日本よりも緯度が高いからね」
カズキはまた、恵美子の首筋にキスマークをつけ出した。
「もぉ!またそんなことする!」
「記念スタンプだから」
カズキは何度も何度も恵美子の首筋に愛の印を付けていた。
キリッと髪をまとめてパンツスーツに着替えた恵美子は、昨日の淫らな恵美子とは全く印象が違っていた。
「なーんか、昨日と全然違う・・・」
「当たり前よ。もう仕事モードよ」
「もう会えないのかな・・・」
「・・・ううん。またいつか会えるわよ。絶対に」
「絶対?」
「お互いに今の仕事を続けてる限りはね」
恵美子はカズキの頬に軽くキスをした。カズキはまた襲いかかりそうになったが、抑えた。
「だから手良嶋くんも頑張って。ずっと小説書き続けてね」
見送りはいらないという恵美子と、マンションの前で別れた。
あんなに濃い一週間を過ごしたのに、別れる時はあっけないものだった。
最初から目出度く恋人になれるなんて期待はしていなかったけど・・・。
もうとっくに高く日の上がった空を見ながら、どこかに恵美子の乗った飛行機が飛んでいないか探していた。
「またいつか会えるわよ。絶対に」
本当にそうなるんだろうか?この時のカズキは、まだ半信半疑だった。
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