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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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やっぱすっきゃねん!U…E-5

「どうでしょう?そろそろ新しいコーチを迎えられては」

「そんな! 私は今のやり方……」

一哉は永井の言葉を右手で制した。

「勘違いしないで下さい。私は辞めませんよ」

 そう前置きしてから話を続ける。

「秋季大会を見てて思ったんです。選手の調子、起用法。全て貴方がこなさなきゃならない。
 これでは手が回らないでしょうし、チーム力にも影響します」

「しかし、それでは藤野さんが…」

「私はOBとして練習に参加します。それなら問題ないでしょう?私の事よりも、部員の事を考えれば新しいコーチを迎えるべきです」

一哉の提案に永井はしばらく考え込んでいたが、

「確かに言われる通りですね。しかし、すぐに頼まれてくれるか……」

「ですから、3年生が指導していられる間に決めるんです」

「…1月末までとして約3ヶ月半か…学校側にお願いしてみますか」

ようやく永井の表情が緩む。それを見た一哉の顔にも笑みが戻った。

「…では、そろそろ帰りましょう」

真っ暗になった外を眺め、2人は職員室を後にした。




同じ頃、佳代は自宅で入浴中だった。

「…いでで……くうっ…」

傷口がお湯に触れて沁みる。お尻からヒザ、ヒジなど、至るところに擦り傷や打ち身が出来ていた。以前から時々は擦り傷は作っていたが、一哉がコーチに就任してからは絶える日が無いほどだった。

しかし、佳代は辛いとは思っていなかった。一哉を迎えてひと月あまり、ようやく練習についていけるようになり、むしろ来年への手応えを感じていた。

「姉ちゃん! お母さんがゴハンにするから早く上がれって」

風呂場の向こうから、弟の修が呼んだ。

「今日のおかずはーっ?」

「姉ちゃんの好きなキムチ鍋だって」

「分かった! すぐ上がる」

佳代は慌てたように風呂から上がると、シャツとジャージ姿とタオルを首に巻いてキッチンに向かった。

「早くそっちに座りなさい」

母親の加奈が土鍋をテーブルに置いた。修は食器を並べてる。
 しかし、日曜の夜というのに父親の健司の姿が見えない。


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