やっぱすっきゃねん!U…E-2
ー昼休みー
午後からの体育に備えて給食を終えた女子は、早々に体育館の2階で着替えていた。
元々、ジャージ姿の佳代には必要無い場所なのだが、尚美の話を聞こうと体育館について行く。
「そこにしよっか…」
着替えを終えた尚美は、佳代と有理を連れて体育館の正面入口の階段にしゃがみ込んだ。
グランドではサッカーに興じる男子の姿が遠くに見える。
「…で、どうだったの?」
早く結果を知りたいと急かす佳代。対して尚美は俯き、しばらく躊躇している様子だったが、やがて決心してポツリと言った。
「…ダメだった……」
「エエッ!」
「なんで!?」
驚きの声を発した佳代と有理。朝の雰囲気から、当然、上手くいったモノと思っていたからだ。
「…他に…好きな人がいるんだって……」
尚美はポツリポツリと昨夜のことを話し終えると、悲しそうな顔をして下を向いてしまった。それを目の辺りにした佳代も有理も、掛ける声を失った。
グランドで遊びに興じる声が、遠い存在のように響いていた。
「整列!」
夕方、キャプテン信也の声がグランドに響く。彼の前には、ズラリと並ぶ部員達。
「今日、監督は来られないそうだ。従って、オレと副キャプテンの山崎で……」
(…あの人に好きな人がねぇ。わかんないもんだわ…)
佳代は列の中から信也を見つめながら、尚美の言った事を思い出していた。
(…尚ちゃん。落ち込んでたなぁ…)
尚美は昼休み一杯、黙って俯いていた。佳代達は何も言えずに、ただ、彼女のそばについていた。
「……以上だ」
練習前のミーティングが終了し、全員がグランドを走り始める。佳代は尚美への思いを燻らせたままだった。
日が沈んだ薄暮の中、練習を終えて3年生は帰って行く。 2年生はグランド整備、1年生はボール磨きを行って、その日が終わる。
「澤田」
いつものように、トンボを持ってグランドに走って行こうとする佳代を、信也が呼び止めた。
「…な、なんですか?」
何かにつけ彼に怒られている佳代は〈また何かやったかな?〉と、オドオドしながら、トンボを引きずって傍に行った。