Good Student?-3
「…とにかく、頼むからあいつにだけは必要以上に近付くなよ!」
しかし、俺の必死の説得も虚しく終わった。
「無理だって。だって総太、吹部に入ったし」
「…マジかよ…!!」
俺だって大人だ。自分の言い分や欲求を抑える理性はちゃんと持っている。
でも、その前に俺は男だ。
自分の好きな女に片思いしてる奴が、好きな女の近くにいても余裕なわけじゃない。
幸い、サチは総太のことを『可愛い後輩』だとしか思ってない。
俺だって同じことが言えるが、それでも、『幼なじみ』ってだけで家にも平気で行けるし、2人で出掛けることもできる。
だったら、ここは先手必勝だ。
「─サチ」
廊下を歩いていたサチを呼び止める。サチは少し驚いたような表情を見せた。
「山本先生、…何ですか」
「あぁ、あのさ、部活終わったら一緒に帰らないか?俺、今日は早く帰れそうだし」
周りに聞こえないように小声で話す。この2人だけの会話が心地よい。
「珍しいね、一緒に帰ろうだなんて。…んー、いいよ。カナちゃんにもそう言っとく」
よしっ。
たまにはこんなんのも、悪くないだろ?
そのままサチと別れて職員室に入る。椅子に座った俺は、早速今日中に片付けなければいけない書類などに取りかかった。
「山本先生、どうしたんですか?そんなに忙しそうにして」
隣の机にいた先生が首を傾げてこちらを見る。
「いや、今日は早く帰りたいんで」
「へぇ、彼女とでも出掛けるんですか?」
「そんなんじゃないですよ」
半ば冗談混じりで言ってきた質問を軽く笑って返して、また作業を再開した。