『茜色の空に、それから』-4
だから、
「謝らないで・・?・・・嬉しかった、から・・・。」
そう囁いて、しんちゃんの正面に体を向けて、そっと頬に口づけする。
自分で言っといて、耳まで真っ赤になってるのが分かる。
しんちゃんはそんな私の頬を両手で包み込み、優しくキスをする。
「そんな可愛い事言われたら、また押さえられそうにないんだけど。」
意地悪く微笑むしんちゃん。
ボッ。
私はますます赤くなってしまう。
しんちゃんは私を甘く翻弄する。
しんちゃんは、学生時代の私は奔放で自由で掴み所が無かった、と言うが、私はしんちゃんに焦がれ、幸せで、切なくて、愛おしくて、こんなにも揺らめいてしまうのだ。
そうして。
暫く余韻に浸る様に玄関で抱き締め合っていた私達だが、止めようの無いお腹の音に笑い合って、空腹を満たすべく手を取り合って外に出た。
「あーあ。折角美味しいって聞いたお店に連れてってあげようと思ったのにー。」
もうすっかり夜も更けてしまい、駅前とはいえ、閉まっているお店も多い。しんちゃんはちょっと拗ねた様に呟く。
「誰のせいよー。」
「明香だよ。」
「・・・。」
思わぬしんちゃんの即答と、真っ直ぐな視線に、私は又赤くなって俯いてしまう。
そんな私にしんちゃんは少しかがんで、「愛してる。明香。」と耳元で囁いた。
私も。とても。
少し照れ臭そうにしている愛しい人に、今度はちゃんと言葉にして応える。
春霞の淡い夜空が、優しく二人を包んでいた