『茜色の空に、それから』-3
「イヤだ。ムリ。」
ううっ。そんな即答しなくても。
しんちゃんの動きはますますエスカレートし、私は、胸ははだけ、あられもない姿になってしまった。
「あっ・・。・・・ふ・・・っん・・。」
右の胸にざらりとした感触を感じ、思わず声が出てしまう。
しんちゃんが、舌で、唇で、私に快感を与える。
絶え間なく押し寄せる快感に、力が抜けて、立っていられなくなりそうだ。
と、しんちゃんが、おもむろに私の後ろの靴箱の開き戸を開け、私をくるりとそちらへ向かせる。
靴箱は玄関の壁面全体に造られており、ちょっとしたクローゼットみたいになっている。
下の方は狭く、上の方は広く仕切られていて、しんちゃんは下に靴、上に傘立てを納めていた。
それ以外の棚はがらんとしていて、私は、刺激を与えられた体を支える為に、両手をその空いた棚板にかけた。
背後で、ベルトを外す音と、どこから取り出したのか、ビニールを破る音が聞こえた。
「しんちゃん、お願い、お部屋に・・・・っ・・ああっっ・・!」
突然の挿入。
そこに与えられる初めての刺激があまりにも強過ぎて、意識が遠のいてしまいそうだった。
しんちゃんは、崩れ落ちそうになる私の片膝を持ち上げ、太腿の高さ位の棚板に置くと、激しい出入りを繰り返した。
上半身への愛撫だけで、恥ずかしい位に濡れていたけど、急な挿入と激しい動きにもの凄い圧迫感を感じる。
「・・っん・・。あっ・・・!っやっ・・!」
突かれる度に漏れる私の吐息と、靴箱の軋む音が静かな玄関に響き渡る。
押し寄せる快感の波に、意識を手放してしまいたかったけど、狭い玄関の蛍光灯の明かりはいやに明るく感じられて、腰まで捲り上げられているワンピースのスカートと、脱がされないままのブーツとが羞恥心を呼び起こさせる。
背後では、私の背中に口づけを落とすしんちゃんの切なそうな、甘い吐息が聞こえる。
「・・っ、・・・明香・・、・・愛してる・・っ。」
私も───。
そう声に出そうとするのだけど、もう私の口からは吐息と嬌声しか出ない。
「・・・んっ・・!・・っ・・・。も、ダメ・・・っ!・・しん・・いち・・っ。」」
私が叫んだのと同時に、しんちゃんはますます腰の動きを早め、最後に私を強く抱き締め、私の中で果てた。
「・・・。ごめん・・・。」
崩れ落ちる私の身体を、玄関のコンクリートでない所に座らせる様に支えて、私の腰に後ろから腕を回して小さく囁く。
すっかりぐったりしてしまってる私は、その言葉の意味が読み取れず、お腹にあるしんちゃんの細くて綺麗な手にそっと両手をのせた。
「・・。何か。・・・無理矢理みたいで、ごめん・・。」
そう呟いて、私の襟足に顔を埋めるしんちゃん。
・・・。無理矢理!?
いや、まあ、こんな明るい中で服も靴も脱がずに(いや、裸の方が恥ずかしいのだけれども)、しかもお風呂にもベッドにも入らないで、っていうのはかなり恥ずかしいけど・・・。
でも、しんちゃんが私に欲情してくれている事に、私を求めていてくれる事に、私はいつも幸福を感じる。