『茜色の空に、それから』-2
「明香。」
照れ隠しにブーツを脱ぐ事に気持ちを反らそうとかがもうとしたその時、背の高いしんちゃんの声が上から聞こえた。
「ん?」
しんちゃんの顔を見上げた瞬間、しんちゃんの唇が私の唇に触れた。
ついばむ様な、優しい口づけから、次第に、舌で私の舌や歯や口内全てを求める激しいものに変わる。
「・・んっ・・・。」
その甘く深い口づけに思わず吐息が漏れてしまう。
頭がじんじんする。真っ白になる。「蕩(とろ)ける様なキス」、って、こういうのを言うのね、と、ボウッとする頭の隅で考える。
私の吐息を聞いてか、しんちゃんは唇をそっと離す。
私を見つめるその瞳は真っ直ぐで、でも熱を帯びている様に見えた。
「会いたかった・・・。」
切ない顔でそう呟くしんちゃん。
ギュッ。
本当に心臓がそんな音を立てた様な気がした。
「キュン」とか、「ドキッ」とか、そんな生やさしい表現では追いつかないこみ上げる感情。
私はブーツを脱ぐのも忘れて、背の高いしんちゃんの背中に腕を回し、そっと、でもしっかりと抱き締めた。
「私も・・・。」
恥ずかしくって顔をまともに見つめる事が出来なくて、しんちゃんの胸に顔を埋める。
スラッとして一見凄く華奢に見えるしんちゃんだが、肩や胸にはほどよく筋肉が付いており、意外に逞しい。
あれ。
いつもなら、こんな時、すぐに私を抱き締め返してくれるのに。息が出来ない位、キツく。
少し不安になって上を見上げる。
するとしんちゃんは憂いを帯びた瞳で私を見つめ、
「ごめん、明香、ムリ。」
と短く呟くと玄関の側面の靴箱に私を押し付ける。
そうしてしんちゃんは、私に驚く間も与えず、唇から頬、耳たぶや首筋に口づけを降らしていく。
「・・・っ!やっ・・・。し・・ん、ちゃん・・っ。」
私は身を捩ってしんちゃんの甘い唇の動きから逃れようとするけど、男の人の力に敵う訳はなく、ただただ漏れてしまう嬌声を我慢するしかなかった。
「我慢しないで。・・・明香。」
私の首の辺りに顔を埋めていたしんちゃんが、そう言って私を見上げる。
その上目遣いの視線に思わずゾクッとしてしまう。
思わず抵抗するのも忘れて、甘い口づけに身を委ねてしまいそうになる。
するとしんちゃんは、ワンピースの肩の部分をぐいっと下にずらして露になった鎖骨に唇を落とし、スカートの裾を乱暴にたくりあげて太腿をまさぐる。
「ちょっ・・。しんちゃん、・・待って・・・っ。」
さすがに驚いてしまって、私は慌ててしんちゃんの動きを制止しようと抵抗する。
「ご、ご飯っ。ご飯食べに行こっ。」
取り敢えず荷物を部屋に置いて、晩ご飯を食べにすぐに出掛けようと、さっき駅で二人して話したのを思い出し、しんちゃんに提案する。