ヒメゴト〜confusion〜-2
「さっさと失せろ!」
ガシャン!
バタバタバタ…!
見えはしないが、
恐らく胸ぐらを掴んで壁に叩き付け、
そのままトイレ外に追い出した、
……のだろう。
しばらく静寂な間が有り、コンコン、とドアを叩かれた。
恐る恐るドアを開ける。
「早く!行くぞ!」
麻衣子が気付いた声の主は間違っていなかった。
胸を撫で下ろすのと同時に疑問も沸いて出た。
呆気にとられていると、
ぐい、っと強引に麻衣子の手を引いた。
「ほら、急げ!アイツが戻ってきたらどーすんだ!」
急に上から引っ張られ、
麻衣子はバランスを崩しながら、
よろよろと立ち上がった。
ぐいぐい、と引っ張るものだから、
そのままふらふら個室から出てしまった。
「大丈夫か?行くぞ?」
こくり、と頷いたが、
彼の意図が解らず、
呆然と手を引かれていた。
(西田くん…。何で戻ってきたんだろう…。)
先程の様に陽介は無言で駅構内を歩き続けた。
麻衣子も色んなショックを隠せずにいた。
「野村サンって家何処?」
こちらを振り向く事もなく淡々と切り出された言葉に戸惑った。
「ここから…電車で15分位…です…。」
「そう。じゃあタクシーで送るよ。」
驚いてしまって麻衣子は急に歩みを止めた。
「嫌?」
不意に振り向かれ、
先程までとは全く違う陽介の表情を見て、
あまりに予想外だった為、呆気に取られ、
反応出来ずに居た。
「野村サン?」
ハッ、と我に返った麻衣子は、
「嫌じゃない…です。」
と答える。
瞬間、陽介の顔に笑顔が広がった。
「じゃあ行こう。」
陽介は出口方面に方向を変えると、
先程とは違う、ゆっくりとした歩調で歩き始めた。
麻衣子は戸惑いを隠せず、混乱の渦に捕われていた。
(さっきまでの西田クンは何処にいったの…?)
ぼぉっと歩いている間に、タクシー乗り場に着いていた。
時間もまだ遅くないので、人はまばらだった。