冷たい情愛Die Sekunde-2-1
「今日はこのくらいにしておきましょう」
「ええ、上手くいくといいですね」
遠藤くんのスーツ姿…長身に眼鏡…見慣れていても、素敵だなと思う。
これを恋は盲目と言ったりするのかもしれない。
ここのところ、週末も仕事が立て込み彼とろくに過ごせていない。
私は、仕事中だというのに我慢できず、話を切り出す。
「今週は…会えるかな」
「田舎から…母が出てくるかもしれないんだ」
彼から家族の話を聞くのは初めてだった。
「久しぶりなんじゃない?楽しみだね」
私は寂しくもあったが、久しぶりの親子の時間を楽しんで欲しいとも思った。
「まあ…ね」
彼は、穏やかな笑顔で言った。
しかし私はまた、あの感覚に襲われたのだ。
言葉が出ない…私の心の中に、何か霞んだ負の感情が沸き起こる。
漠然とした感情。
私は、彼の何かを見逃しているような気がする。
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一人の週末は、やはり寂しい。
数年前は、これが当たり前だったのに。
智子は、子どもが生まれてからはさすがに家族との時間を大切にするようになった。
ここ数年、私の相手など出来ない状態だ。
私は、もうすぐ昼になろうとかという時間までベッドでダラダラしていた。
リビングに寝衣のまま入っていくと、父と母がのんびりテレビを見ていた。
私は、両親の姿を横目に、インスタントコーヒーの蓋を開けた。