知らないところ-3
「結婚!?」
周りの年配の先生が何事かとこっちを睨んでいた。
キーワードがキーワードなだけにプロポーズに勘違いされてるかもしれない。
シッと白石先生の口に指をあてる。
「あ、すいません。……でも、柳川まどかですか……?どこかで聞いたこと……あっ」
「柳川瑞穂の姉ですよ」
自分でも、まだ知ったばかりの新事実に驚きをかくせなかった。
自分は彼女と彼はまだ続いてるものだとばかり思っていた。
白石先生は自分と同じくらい驚いていた。
それもそのはず。
「えっ!ちょっと待っ……瑞穂ちゃんと祐介くんって付き合って……それに同棲してましたよね?」
確かに、高校時代から彼女と彼は同棲していた。
それを先生は知っていたのか。
「よくご存知ですね」
「はい」
白石先生は本当に優しく笑う人だと思う。
こんな先生がいたら、何でも話したくなるというのが手に取るようにわかる。
「瑞穂ちゃんの相談によく乗ってましたもの、本音ではけして話してくれないけど」
自分は、偶然だった。
彼女から聞いたわけでも何でもなかった。
「そうですか」
本音か、別に自分と彼女は説明すれば、ただの教え子と高校の時の先生という関係なだけ。
だから、何で話してくれなかった。
とは思わない。
だけど、
白石先生に相談することで気が紛れていたなら、少し自分の中で救われた気がした。
「……先生は、瑞希ちゃんが好きなんですね」
まっすぐ自分を見る先生に嘘はつけなかった。
「……そこまでご存知ですか」
「あ、認めましたね」
くすくすと白石先生は笑った。
かなわないな、この人には。
「でも、くやしいなす。私、皆木先生のこと好きだったんですよ?気づいてました?」
ふんわりと押し付けのない優しい言い方。
しかし、どう反応していいか困っていた。
本気かどうかも、まずわからない。
本気だとしても、全然、気づいてなかった。
しかし、白石先生は、それを言わなくても感じ取ったみたいだ。