フリースタイル1-2
今年の4月、大学生になったばかりのあたしはclubという場所に初めて行った。
歌が好きでsingerを目指してるあたしに沙織がclubというステージを紹介したのがキッカケだ。
でもこんな所で歌えるのかはさっぱり謎だ。
駅前の路上とかで歌ってた方が全然いい気がする。
実際高校の頃はそうしてたし。
「実香ぁ、このあとatomっていうclub行くけど行こーよ」
沙織が足元をふらつかせながら言う。
「まだ行くの!?」
驚いたあたしに沙織は満面の笑みを向ける。
「今回のイベントレギュラーもらったんだぁ」
終電もなかったし、沙織のDJ姿に興味あったあたしは結局行く事にした。
「お次のDJはなんと!キュートでかわいい女の子だぜ!みんなチェキしちゃってくれ!DJ沙織ぃぃぃ!!」
マイクを持った男が沙織を紹介する。
帽子かぶって、サングラスかけて、なんてゆーか…そう!見るからにヒップホッパーな感じ!
周りを見渡すとみんな楽しそうに踊っている。
来なければ良かった
知り合いが全然いないこの空間であたしは一人浮いている。
「お姉さんつまんなそーだねぇ」
いきなり話し掛けられてあたしは持っていた煙草を落としてしまった。
見るとさっきの無理やりキスしてきた人と同じような感じの人。